水面から見上げた屋久杉
国内で唯一世界遺産に登録されている屋久島では、太古の昔から人と自然が共に暮らす文化が形成されている。
ひと月で35日雨が降ると言われる程雨の多い屋久島だが、そのメカニズムはこうである。
島の周囲を流れる黒潮に乗った暖かな海水が急激に蒸発し山の斜面に沿って駆け上る。そこで一気に冷やされた水蒸気は島全体に大きな雲をまとわせ森に大量の雨をもたらす。
苔や木々がそれを貯蓄する天然のダムとなり、豊富な栄養分を含んだ水を川から海へ循環し多様な生態系を創りあげているのである。
古くからこの雨がもたらす恩恵を得てきた島の人々は自らを自然の一部として考え、山の精霊に海からのお供え物を与える行事があるという。
山と海とを繋ぐ遣い手が私達人間だとされる屋久島ならではの風習である。
世界的に環境破壊が進む昨今、自然と人間がどのように関わり暮らしていくか、その理想モデルがこの屋久島にあるのかもしれない。
川に根を張りめぐらせる屋久杉。
撮影地:鹿児島県屋久島